みなさんこんにちは!
連載としてFP(ファイナンシャルプランナー)の資格試験に対応する内容を解説していきたいと思います。
FP試験の内容は日常生活にも深く関わってくる内容が多いので、資格取得を予定していない方でもQOLアップにつながる内容が多いと思いますのでぜひ参考にしてください!
私が独学でFP2級に1ヶ月で合格した経験をもとに、同じように独学でがんばっている方など少しでも多くの方の受験の手助けになれたら嬉しいです!
※試験範囲は変更・追加となる場合がありますので、常に最新情報のチェックをお願いします。
今回も所得税の分類で見てきた各所得税の内容を個別に見ていきましょう。
今回は譲渡所得です。
譲渡所得について
譲渡所得は、資産の譲渡による所得です。販売を目的とする資産の譲渡は事業所得となります。例えば、八百屋さんが野菜を売るのは事業所得となり、これは譲渡所得とは異なります。
次に、譲渡所得となる資産について説明します。以下のような資産が対象となります。
- 土地・建物
- 株式・新株予約権付社債等
- 予約権付きの資産
- (以下その他の資産)
- 車両、機械装置
- 器具備品
- ゴルフ会員権
- 1個または1組で価値が30万円を超える宝石や貴金属 等
また、生活用動産は非課税所得となります。具体的には、30万円以下の生活用動産が非課税となります。この30万円という金額は試験問題にも時々出るので、確認しておくと良いでしょう。
譲渡所得の計算方法
次に、譲渡所得の金額の計算方法について説明します。収入金額から以下の金額を引いて計算します。
- 取得費
- 譲渡費用
さらに、特別控除額がある場合はそれも差し引きます。つまり、収入金額から物を買ったときと売ったときの費用を引き、さらに特別控除額を差し引いた金額が譲渡所得となります。
譲渡所得=総収入金額-取得費-譲渡費用-特別控除額
土地建物の譲渡については申告分離課税が適用されます。これについては、以前お話ししましたが、その詳細は後で確認します。では、ここで総合課税と分離課税について復習しましょう。
- 総合課税: 他の所得と合算して、合計所得に対して一般の税率を適用するものです。
- 分離課税: 他の所得とは別に、その所得だけに特別の税率を適用するものです。
所有期間による違い
所有期間について説明します。短期譲渡と長期譲渡の区別は、所有期間の長さによります。まずは土地建物の譲渡から説明します。
土地建物の譲渡については、以下のように分類されます。
- 所有期間が5年以下のもの: 短期譲渡
- 所有期間が5年超のもの: 長期譲渡
譲渡した年の1月1日時点での所有期間が基準となります。例えば、2024年6月に譲渡した場合、2024年の1月1日時点で所有期間が5年以下であれば短期譲渡、5年を超えていれば長期譲渡となります。
土地建物以外の譲渡についても所有期間で分類しますが、譲渡した時点での所有期間が基準となります。
- 所有期間が5年以下のもの: 短期譲渡
- 所有期間が5年超のもの: 長期譲渡
土地建物の所有期間の基準日は譲渡した年の1月1日ですが、土地建物以外の資産は譲渡した時点の所有期間が基準になります。この違いを理解してください。
例えば、2024年6月1日に譲渡した場合、2024年の6月1日時点での所有期間が5年以下であれば短期譲渡、5年を超えていれば長期譲渡です。
まとめると、土地建物の場合は譲渡した年の1月1日時点での所有期間が基準となり、それ以外の資産は譲渡した時点での所有期間が基準となります。そして5年が境目であることを覚えておいてください。
ポイントは「所有期間の基準日」と「5年」という点です。これを押さえておきましょう。
取得費
次に取得費について説明します。
まず、取得費は以下のような費用を含みます。
- 資産を購入する際に要した費用
- 仲介手数料
- 運賃や運送保険料
- 登録免許税
- 不動産取得税 等
全ての資産にこれらの費用がかかるわけではありませんが、取得費にはこのような様々な費用が含まれます。また、取得費には設備費や改良費も加えられます。
最終的に、取得費から減価償却累計額があればこれを差し引いて計算します。これにより、取得費の計算が完了します。
減価償却資産とは、使用することでその価値が徐々に下がっていく資産のことです。
例えば車です。新車と中古車では当然その価値は違いますよね?
このような資産には減価償却費の累計額を差し引いて計算します。
減価償却費については試験においては軽く触れるだけでひとまずはいいかと思います。
譲渡費用
譲渡費用について説明します。譲渡費用とは、資産を譲渡するために直接要した費用のことです。
全体の流れを説明します。土地建物などの譲渡は、以下のように分類されます。
- 分離短期譲渡: 譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以下のもの
- 分離長期譲渡: 譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるもの
土地建物以外の譲渡は、以下のように分類されます。
- 総合短期譲渡: 譲渡した時点で所有期間が5年以下のもの
- 総合長期譲渡: 譲渡した時点で所有期間が5年を超えるもの
次に、特別控除について説明します。特別控除の最高額は50万円で、この金額は試験問題にも頻出です。特別控除は以下の順序で適用されます。
- 総合短期譲渡
- 総合長期譲渡
この短期が先で長期が後でという順序で控除されるかというのは、納税者にとって有利だからです。総合長期譲渡の方は損益通算の後、所得金額が1/2にされるため、先に総合短期譲渡に特別控除を適用します。
税率について
土地建物等の申告分離課税の税率について説明します。これらの数字を覚えておくことが重要です。
土地建物等の申告分離課税の税率は以下の通りです。
- 長期譲渡所得: 20% (内訳: 所得税15%、住民税5%)
- 短期譲渡所得: 39% (内訳: 所得税30%、住民税9%)
これらの数字を覚えるのが難しい場合ひとまずは、短期の方が税率が高く、長期の方が低いという点だけでも覚えておくと良いでしょう。
土地建物以外の譲渡所得は総合課税になりますので、以前の講座を参考にしてください。
https://agaruqol.com/archives/29#toc2
特別控除について
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除について説明します。これには確定申告が必要です。
この控除は、所有期間や居住期間に関係なく、譲渡所得金額から3,000万円を特別控除することができます。重要なポイントは「居住用財産」という点です。
適用要件
- 居住用財産であること: 自分が住んでいる家屋およびその敷地(つまり、自己居住用の家屋と土地)。
※居住の事実のない投資用マンション等はNG - 特定の条件に該当しないこと:
- 別荘など、自己居住用ではないもの。
- 配偶者や親、子、孫など特別な関係にある人に譲渡した場合。
- 前年または前々年に3,000万円特別控除を受けている場合(この控除は3年に1度しか適用できません)。
特別控除の流れ
3,000万円特別控除は課税標準が確定した後に適用されます。
つまり居住用財産の譲渡に対する特別控除3,000万円は、最後に控除するということですね。
居住用財産の軽減税率の特例
居住用財産の譲渡による長期譲渡所得には、特別な軽減税率が適用されます。この特例の要件は以下の通りです。
- 所有期間が10年を超えていること: 譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年を超える場合。
- 3000万円特別控除の適用要件を満たしていること: 3,000万円特別控除を受けた後、なお譲渡益が残る場合には軽減税率が適用されます。
軽減税率
- 課税長期譲渡所得が6,000万円以下の部分: 所得税10%、住民税4%
- 課税長期譲渡所得が6,000万円を超える部分: 所得税15%、住民税5%
3000万円特別控除と軽減税率特例は併用できますが、他の特例とは併用できません。
この他に買換特例という併用できない控除がありますが、こちらはFP3級の範囲外ですので割愛します。
株式等譲渡所得の課税
株式等譲渡所得
株式を売却して得られる利益(譲渡所得)は、申告分離課税の対象となります。これは、非常時株式も同様で、以前は軽減措置がありましたが、現在は終了しています。
現行の税率
- 申告分離課税の税率は20%です。
- 所得税: 15%
- 住民税: 5%
NISA(少額投資非課税制度)
NISAは、配当や譲渡益に対する非課税制度です。
過去の軽減措置が終了したため、税率が高くなり、その影響で株式取引に対する興味が減少してしまう懸念がありました。そこで登場したのが、NISA(少額投資非課税制度)です。
このNISAの制度は2024年から新NISAとして制度に変更がありますので併せて説明します。
新旧の大きな違いとしては限度額が大幅に増加し、期間が永年となったところがポイントです。
旧NISAの概要
- 非課税対象:
一般NISA: 上場株式、公募株式投資信託、ETF、REIT
つみたてNISA: 長期積立・分散投資に適した一定の公募株式投資信託、ETF - 年間の新規投資額: 一般NISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円
- 非課税期間: 一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間
- 途中売却: 自由
- 口座解説数: 原則1口座のみ(金融機関の変更は1年単位で可能)
新NISAの概要
非課税対象:
つみたて投資枠: 長期積立・分散投資に適した一定の公募株式投資信託、ETF
成長投資枠: 上場株式、公募株式投資信託、ETF、REIT
年間の新規投資額: つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円の合計360万円
非課税の投資総額: 最大1,800万円
非課税期間: 永年
途中売却: 自由
口座解説数: 原則1口座のみ(金融機関の変更は1年単位で可能)
まとめ
譲渡所得はかなり複雑なところも多いのでかなり苦手意識の高い方が多いところだと思います。
しかし、FPの試験範囲に絞ってみれば覚える必要のあるところは限られてきますのでそこまで身構えなくてもいいかと思います。
もし難しくて挫折してしまいそうなら、一度飛ばしてまた戻って来るというのもアリだと思います!
試験勉強はそれぐらいの割り切りが必要なこともあります。
まだまだ始まったばかりですのでがんばりましょう!
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